人間活動が気候変動を引き起こした。でも、どうやって?
地球温暖化が人間活動によるものだという見解は、科学者の間で一致しています。特に、二酸化炭素などの温室効果ガスが世界を温暖化させており、こうした温室効果ガスは、我々が石炭や石油、天然ガスなどを燃やすことで発生します。
科学的な手法やモデルの精度が上がり、より多くのデータが収集されるにしたがって、人間が気候変動を引き起こしたという見解は高まる一方です。
地球全体の二酸化炭素の経年変化 (出典:気象庁)
気候科学をざっくり解説
気候科学は、海洋学や気象学、化学や物理学、生物学やコンピュータ・サイエンスといった幅広い学術分野で構成されています。
大雑把に言うと、気候変動を研究している科学者は、観測された気候のパターンと地球のシステム(大気や海洋など)の精緻なモデルを使って開発したパターンとを比較します。観測パターンとモデル化したパターンを比較することで、科学者は「人間活動の痕跡」を特定して、観測された温暖化に対する人間活動の影響の割合を判断するのです。
人間活動の痕跡は、大気や海洋、地球の表面などの実に様々な記録から見ることができます。こうした記録には、二酸化炭素量の上昇や前例を見ない高い気温、化石燃料が燃焼されたときに大気に残る特定の原子、などがあります。
大気中の二酸化炭素量の履歴
800,000年前からの二酸化炭素レベルを示す。1760年代ころから、産業革命による急激な上昇がみられる。
(アメリカ海洋大気庁およびスクリップス海洋研究所のデータを参照)
上昇する二酸化炭素レベル
二酸化炭素は大気中にあるガスで、熱を閉じ込める性質を持ち、過去数十年の温度上昇の原因とされています。二酸化炭素は、産業革命から今日に至るまで、セメントを製造したり石炭やガスや燃料を燃やしたりするなど、人間が大きく活動するときに放出されてきました。
地球の大気中の二酸化炭素濃度はここ150年の間で劇的に増え続けています。産業革命以前は約280ppmだったのが、現在では410ppmまで上昇しました。この先何百年間かは、二酸化炭素量が以前の平均値を下回ることはないだろう、とされています。
古代の氷床コアを測定したところ、過去80万年の間で今が最も二酸化炭素レベルが高いことが明らかになっています。
世界の年平均気温偏差(陸上のみ)の経年変化(1880〜2020年)
(出典:気象庁)
前例のないほどの高気温
二酸化炭素やその他の温室効果ガスの大気中の濃度が上昇するにしたがって、地球は温暖化しています。特に1950年代から、地球はいまだかつてないほどの温暖化を経験しているのです。
1977年以降、毎年の平均気温が20世紀の平均を下回ることはありません。また、2014年から2020年までの値が上位7番目までを占めています(気象庁)。こうした変化から、高温を記録した各15年のうち13年間については、石炭や燃料からの二酸化炭素の排出を加味せずに自発的に起こった、あるいは急に連続して高温を記録することはほとんどありえないだろう、との分析がなされています。
2018年に発行された米国気候評価では、「人間活動、特に温室効果ガスの排出が、20世紀中ごろから観測される温暖化のほとんどの要因を占めている可能性が非常に高い」としています。
化石燃料の痕跡
二酸化炭素が地球を温暖化していること、そして、二酸化炭素濃度や世界の気温が記録的な高さになっていることは良く知られています。しかし、人間が原因だとどうしていえるのでしょうか?
科学がこの問いに答えています。化石燃料から排出される二酸化炭素には、ほかのものから排出される二酸化炭素とはちがう特有の指標(signature)があるのです。簡単に言うと、石炭やガス、石油が燃焼した時にだけ見つかる炭素安定同位体比があるのです。
科学者たちはこれをデルタ13Cと呼んでいます。1880年以降、デルタ13Cは化石燃料源から排出される二酸化炭素が増えることでしか起こり得ない方法で変化しているのです。
こうした情報から科学者は、産業革命以降の二酸化炭素濃度の上昇が人間活動による化石燃料からの排出に起因するとしているのです。
科学的な見解の一致
科学者コミュニティでは、気候変動の原因の基本的な部分に対する異論はありません。複数の研究結果から、97%の科学者が地球温暖化は現在進行中であり、その主な原因が人間活動であることを認めていることが明らかになりました。
IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が2014年に発行した報告書は、世界から数百名の気候の科学者や専門家がその作成に参加しました。このIPCC報告書では、人間が気候システムに影響を及ぼしていることは明白であること、また、最近の人為的な温室効果ガスの排出は過去最高となっていること、さらに気候システムの温暖化は疑う余地がなく、1950年代以降に観測される変化が過去数十年から数千年にわたって経験したことのないレベルであることが示されています。
自然の要因
地球は、人類が現れる前から暖かくなったり寒くなったりしています。自然の気候の変化は太陽からのエネルギーや、定期的な火山の噴火やほこり、海塩粒子の飛散、シロアリ塚から発生するメタンや植物による二酸化炭素吸収のような自然生態系の現象、さらには地表面を覆う雪や氷が太陽のエネルギーを宇宙に跳ね返す割合(アルベドと呼ばれる)の変化などによって左右されます。
こうした自然要因が地球の気候を構成しているのですが、このうちのどれも、世界の気温が近年劇的に上昇していることを説明できません。このことからも、人間の影響力を加味する必要があるのです。
自然の要因+人間の要因=現状
自然と人間に起因する気候の変化を比較すると、人間の影響力がとても大きいため、過去半世紀の人間以外の現象は、現在の温暖化の原因とは比べ物になりません。また、気候科学者が気候の自然な変化にのみ着目した場合、科学的なモデルは過去半世紀に観測された温暖化を正確に再現することはできません。しかし、このモデルが人為的な気候の変化を加味した場合には、大気と海洋で見られる現在の温度上昇を正確にとらえることができるのです。
研究結果によれば、1951年から観測されている温暖化の原因の半分以上は、人間活動によるものとされています。
これらのことからIPCCやその他の国際機関は、温室効果ガスや人間活動による影響が気候システムの中に検知できるとし、「20世紀中ごろから観測される温暖化の主な原因となっていることがほとんど確実」としています。
ー参考ー
人間活動による二酸化炭素を実質排出しない取り組み、カーボンニュートラル政策が進められています。しかし、二酸化炭素の排出を今すぐやめても、気候変動の影響は避けられないのです。だからこそ、気候変動の影響を緩和する対策と合わせて、影響への備えの適応策が必要なのです。
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二酸化炭素の累積排出量によって、21 世紀後半及びその後の世界平均の地表面の温暖化の大部分が決定づけられる。気候変動の特徴の大部分は、たとえ二酸化炭素の排出が停止したとしても、何世紀にもわたって持続するだろう。このことは、過去、現在、及び将来の二酸化炭素の排出の結果による、大規模で数世紀にわたる気候変動の不可避性を表している。
参考文献
Union of Concerned Scientists How Do We Know that Humans Are the Major Cause of Global Warming?
気象庁 二酸化炭素濃度の経年変化
気象庁 世界の年平均気温
東北大学大学院理学研究科 二酸化炭素の炭素同位体比
エアロゾル学会 エアロゾルペディア 海塩粒子 sea salt particle
ナショナルジオグラフィック メタンは善か悪か
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