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気候変動を話し合うということ

更新日:2月1日

つくば市の補助金「中小企業等販路拡大補助金」の助成を受けて始めた気候変動ワークショップ。気が付けばすでに3年目に突入しました。

これまで実施した経験から、気候変動にはいろんな考えの人たちとの対話が必要だと痛感しています。この理由を2点から振り返り、気づいたことをまとめたいおもいます。




気候変動に対話が必要なわけ

どんな社会課題もそうですが、一つの対策がすべての人にとってよい対策とはなりえません。気候変動の場合、それがほかの社会課題より複雑に表れる傾向があるかなと思います。とても顕著な例として、気候変動の深刻さから急激な変化を求める人たちと、経済との両立を図るために緩やかな変化を望む人たちの対立があげられます。特に欧米では、若い環境活動家が時には迷惑行為と思えるような主張をしています。彼らの主張は、気候変動はぎりぎりのころまで来ている。もっと大きな変革をしなければ、将来世代は今のように暮らせないようになってしまう、というものです。これは本当にもっともで、科学的にも証明されています。とはいえ、今すぐに脱化石燃料・脱炭素に切り替えたら、いまその産業で生計を立てている人たちはどうなるでしょう?こうした人たちへの救済なくして変革はない、というのが、気候変動政策研究の分野での共通認識です。

気候変動は今の社会の基礎となる自然環境を大きく変えてしまいます。この変化は私たちの食生活を支える農水産物に大きな被害をもたらします。このため、食料の争奪戦が全世界で始まるといわれています。食料自給率が30%程度の日本は、食料のほとんどを外国からの輸入に頼っていますが、本格的に食糧の調達が困難になった時、日本に輸出をしてくれる国は果たしてどの程度あるのでしょう?こうした背景から、食料価格がもしも高騰した時、真っ先に影響を受けるのは、社会的弱者の人びとです。この例は、気候変動が社会にもたらす多くの深刻な影響のほんの一つにすぎません。そして、これが気候変動が公正や正義の文脈で語られる理由です。

気候変動の影響は複雑かつ広域なため、気候変動対策で置き去りにされてしまう人たちを見つけるのは、至難の業です。日本の例では、洪水対策として広域での治水工事が検討されています。しかし、ある地域では、自身の地域には浸水被害は想定されないにもかかわらず、下流域を洪水から守るために移転を検討することを求められています。こうした人たちにとっては、いくら対策が効果的だからと言って、簡単に納得できるものではないでしょう。このように、意見が二分される対策には、いろいろな人たちの意見を取り入れて、なぜ、この対策が必要なのかの問題意識を共有することが、誰も取り残さない対策を検討するうえでとても重要といえるでしょう。

このように、立場の違う人たちが話し合いをすることは、お互いに折り合いをつける可能性を広げます。コロナ禍で実施した筑波大学生による気候変動とSDGsのワークショップでは、経済発展を考え直すべきだとする先進国の学生に対して、自分たちが発展するチャンスを阻害することになる、と主張しました。こうした意見の違いは、お互いがそれぞれの立場を説明することで、どのような対策が望ましいかを一緒に考えることで、方向性を一致させる可能性が広がりました。(ちなみにこの先進国と途上国の対話は、途上国が再生可能エネルギーで経済発展ができるよう、先進国が支援するのがよい、との結論に至りました)。





世代間の対話

気候変動といえば、若い環境活動家のグレタさんが思い浮かびます。欧米では、このような若い世代と経済発展の恩恵を受けた上の世代との対立が目立つように思います。これに対して、親世代が子供たちにより良い環境を残したいとの目的で活動をされている団体が欧米にはあります。しかし、世代間で気候変動を話し合う、という機会は、これまであまり見なかったように思います。若い世代とシニア世代が気候変動を話し合うと、どのようなことが議論されるのでしょう?気になったので、世代が異なるグループでワークショップをしてみました。

この結果、とても顕著だったのが、地域の人たちは気候の変化に気が付いていない、ということでした。おじいちゃん・おばあちゃん世代は、自分たちが子供のころに体験した冬の遊びを今の子供たちが体験していない(湖の上でのスケートなど)ことに気が付いておらず、若い世代は、まさかそんなことが自分たちの地域でできるなんて、ととてもびっくりしていました。この話し合いから、おじいちゃん・おばあちゃん世代は、なんとかして環境を守りたいという気持ちが強くなり、若い世代は昔の地域の様子が今では想像できないことに驚きと悲しさを感じていました。

気候変動を話し合うとき、これからの対策をどうするか、に焦点を当てることが多いのですが、このように、昔はどうだったかを地域の人たちと話し合うことは、気候変動の進行に気が付く機会になります。



ワークショップでの気づき

これまで、地域の人たちや学生さんとワークショップをしてきましたが、直近でとても印象的だったのが、生協さんでのワークショップです。生協さんは生産者と消費者が重なり合ってできた組織です。気候変動は、大量生産・大量消費・大量廃棄が主たる原因です。今まで事業者さんと気候変動について話し合うとき、脱炭素の流れのなかで、どうすればエネルギー効率よく生産が続けられるか、や、エコな製品に転換できるか、など、今までの事業を持続可能にするような話題が多いように思います。けれど、気候変動を食い止めるためには、今までのやり方を見直す必要がある。これを後押しできるのは、実は消費者である私たちなのかもしれない、と、生協さんのワークショップでの議論は、消費者の立場で進んでいきました。便利な生活はとても快適で、いったんこの暮らしを手に入れてしまえば手放すのはなかなか難しい。けれども、親世代である私たちは、子供たちに良い環境を残したいと思う。そのために、産業と消費を見直す必要がある。という気づきに至るには、毎日の消費から生産をトータルで考えることがきっかけとなるのだと、生協さんの議論から教えていただきました。



 

これからの活動

いままで、気候変動の仕組みとその影響を可視化するワークショップを実施してきました。始めたときには、これがベストという気持ちが強かったのですが、ワークショップだけでは、気候変動対策にはなりえないことを痛感しました。

そんなわけで、これからは別の角度で気候変動対策に取り組もうと思います。次回のテーマは、地域産業を気候変動対策へ、です。

2023年に、兵庫県で起業のための助成金をいただくことになりました。ステージを新たに、さらに気候変動対策にまい進します!

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